ゴーンが逮捕されても、監査法人の責任が問われない理由




カルロス・ゴーン逮捕される

日産自動車のカルロス・ゴーン会長が東京地検特捜部に逮捕されました。

容疑は、金融商品取引法違反です。内容は、有価証券報告書の役員報酬の金額の虚偽記載です。

このニュースで、「監査法人の責任が問われる」とか「監査法人から逮捕者が出るかもしれない」とか言っている評論家やコメンテーターが多いです。

こいつらは、有価証券報告書を読んだことがないのでしょう。

日産自動車の有価証券報告書を読めば分かりますが、監査法人の責任が問われることは99%ありません

その理由を、これから説明したいと思います。

なお、日産自動車の有価証券報告書は日産自動車のIRサイトで読めます。

今回は、平成30年(2018年)3月期の有価証券報告書を見ていきます。

監査法人の監査対象は「経理の状況」だけ

まずは、有価証券報告書の最後の方に付いている「監査報告書」を読んでいきましょう。

連結財務諸表に対する「独立監査人の監査報告書及び内部統制監査報告書」の文言はこちらです。

<財務諸表監査>
当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明を行うため、「経理の状況」に掲げられている日産自動車株式会社の平成29年4月1日から平成30年3月31日までの連結会計年度の連結財務諸表、すなわち、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結包括利益計算書、連結株主資本等変動計算書、連結キャッシュ・フロー計算書、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項、その他の注記及び連結附属明細表について監査を行った。

単体財務諸表に対する「独立監査人の監査報告書」の文言はこちらです。

当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明を行うため、「経理の状況」に掲げられている日産自動車株式会社の平成29年4月1日から平成30年3月31日までの第119期事業年度の財務諸表、すなわち、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、重要な会計方針、その他の注記及び附属明細表について監査を行った。

監査法人の監査対象は「経理の状況」で、それ以外は監査対象ではないことが分かります。

ただ実際は、監査法人は監査するときに、「経理の状況」以外の箇所も読んでいます。「経理の状況」以外の箇所の数字に誤りがあれば、会社に対して指摘します。でも、オフィシャルには、「経理の状況」しか監査していないことになっています。

有価証券報告書の虚偽記載があったのは「提出会社の状況」

今回虚偽記載が問題となったのは、役員の報酬の虚偽記載です。

次に、有価証券報告書の目次をご覧ください。

役員の報酬が記載されている箇所は、「第4【提出会社の状況】」の「6【コーポレート・ガバナンスの状況等】」です。

先ほど述べた通り、監査法人の監査対象は「第5【経理の状況】」です。

つまり、「第4【提出会社の状況】」の「6【コーポレート・ガバナンスの状況等】」は、監査法人の監査対象外です。

したがって、役員の報酬の虚偽記載について、監査法人が責任を負うことはありません。

「経理の状況」に虚偽記載はあるのか。

「経理の状況」を見ていきましょう。

連結損益計算書にも、単体の損益計算書にも、「役員報酬」の勘定科目はありません。

平成30年(2018年)3月期の役員報酬は約20億円です(「第4【提出会社の状況】」の「6【コーポレート・ガバナンスの状況等】」より)。

それに対し、単体の損益計算書の販管費(販売費及び一般管理費)の金額は約3400億円です。

仮に、役員報酬の金額が30億円に修正されたとしても、販管費の総額の10%以下ですから、「役員報酬」という科目を設けて独立掲記する必要はありません。

したがって、「経理の状況」が訂正されることはなく、結果として「経理の状況」の虚偽記載はないということになります。

「経理の状況」の虚偽記載がない以上、監査法人の責任が問われることはありません。

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